« 193系電車 | トップページ | KATO EF57 »

2020年6月14日 (日)

京成青砥駅脱線事故

 12日午前、京成電鉄青砥駅に進入しようとした羽田空港駅各駅停車の列車(北総7818F)が停止直前に脱線した事故で、電車の台車に複数の亀裂が生じていることがわかった。

 台車は側梁の空気バネ付近のところで断裂に近い状態になり、車輪はレールから20センチもずれていた。

 当該編成は京成3700型を北総鉄道にリースしたものだが、1994年に東急車輌で製造されたものであるらしい。台車はFS-547といういわゆるSUミンデン式というタイプで、阪急や東武などで広く用いられている台車だ。

手元にある鉄道ピクトリアルのアーカイブスセレクション「住友金属の台車」によると、このタイプの台車は1966年に千代田線新型車両の選考試作として、東西線5016に装備されたFS364という台車が最初の様だ。

 Minden型というのは軸箱支持装置の一つの型だが、住友金属(当時)では1961年に西ドイツKHD車と提携し、同社の客車用台車を元に自社で設計した台車を製作し阪急2011で試用した。

 これは側梁が一体鋳鋼製だったが、次いで作られたFS-345/45はKHDのオリジナル台車に忠実に設計製造しようと、台車枠全体を鋼板切板溶接により製作している。阪急で幅広く採用されたFS-345系や、小田急NSE用のFS-346、営団日比谷専用のFS-348などは鋼板切板溶接製で、これらは台車の外観が非常にシャープに見える。

 南海7000系と東武8000系は共に1963年の製造初年だが、これらの台車はいずれもミンデンのFS-355/055、FS/356/056で外見は非常に似通っている。共に台車枠は鋳鋼製だ。

 前掲書によると、「・・日独の台車文化のさまざまな違いが本来の溶接構造による標準化の妨げとなり、一方では頑丈な鋳鋼台車を好む客先もあって、鋳鋼製の台車枠も併行して製作された。」とある。製法の詳しいことはわからないが、メーカーとしては鋳鋼製よりは鋼板切板製を推進したいところ、客先側の認識は丈夫な鋳鋼製を所望した、というように読める。

 ミンデンの新設計は1960年代半ば頃まで行われていたが、その後SUタイプが開発されたために終熄したように見える。標準ミンデンの欠点である、長い台車前後長の改良がその主眼であるようだが、SUタイプでは標準ミンデンで採用されていた鋼板切板溶接方式は見られず、もっぱらプレス鋼板製(前掲書ではプレス鋼板もなか貼り合わせ式と称している)で製作されているようだ。

 もなか合わせというのは、コの字型断面のものを組み合わせてロの字型にしたものではないかと思うが、今日では標準的な台車枠製法であるようだ。なお、先のFS-348は増備型がこの鋼板貼り合わせ式になっている。オリジナルと比べるとやや鈍い外観だ。

 外野の立場としては、鋼板貼り合わせ式に強度上の問題があるのではないか、などと言うことはできないのであるが、今回の東武、京成の事故を見るに、そこにはなにか今まで人知の及ばなかったなにかがあるのかもしれない、と考えざるを得ない。

 「頑丈な鋳鋼台車」、あるいはミンデンオリジナルの鋼板切板溶接台車を今日に復活させることは難しいのか。メーカーの事情はわからないが、ひとつ覚えていることがある。東武8000が’76年にマイナーチェンジした際、台車をSU式のFS-396/096に改めた。これは従来の台車(鋳鋼式FS356/056)がメーカーの都合で作れなくなったためと、当時読んだ雑誌に書かれていた。

 素人目にも、鋳型に流し込む鋳鉄より上からドスンとプレスする方が手っ取り早いようには思えるけど。。

Photo-taken-on-20160518-202130

2016年5月の東上線中板橋-大山間。このとき上りは上板橋折り返しで一部区間バス代行になっていましたね。

私は当時まだ西武新宿沿線に住んでいましたが、板橋区役所前から野次馬してしまいました。。

Photo-taken-on-20160518-203003

11003Fは長期休車となっていましたが、昨年復活を遂げました。

R8313901

運輸安全委員会の事故調査書。報告では台車に設計上の問題はなかったとされ、亀裂発生の要因は溶接欠陥の可能性はあるが特定不能としています。また国交省では国内を走る同種の11,000台車を点検した結果、問題のある車両はなかったとあります。

東武では再発防止策として、非破壊検査の測定箇所を増やす、などの再発防止策を講じたようです。

 

さて、新しい車両も到着しているのですが、本日は予定を変更して、でした。

 

« 193系電車 | トップページ | KATO EF57 »

東武鉄道」カテゴリの記事

京成、京成グループ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 193系電車 | トップページ | KATO EF57 »

無料ブログはココログ

最近のトラックバック