Brakeless~JR福知山線脱線事故9年
本当は別のことを書くつもりでいたが、今夜見たテレビ番組のほうを先に書きたい。
NHKの番組紹介。
ロンドン在住の映画監督、三宅響子さんが制作し、3月にBBCで放送された。確かNHKのニュースで、番組の紹介をしていた。
事故について知識のない海外の視聴者でも理解できるように、戦後の日本経済の興隆や国鉄民営化などに触れながら、事故に遭遇した乗客の方の証言を中心に映像が綴られている。
実は冒頭数分を見逃したので、そこで紹介があったのかもしれないが、乗客の方が、車内の様子をイラスト(とそれをもとにしたアニメーション)にしている。かわいらしいイラストだが、これがとても生々しい。
特に、事故直後の車内の描写が圧巻である。
「次の瞬間がこれでした。車体がこういう風にぎゅうっと、ぎゅうっとねじれていって、ビールの空き缶みたいにくしゃくしゃくしゃっとこう、丸まっていくような感じなので、まあ、クーラーの羽根とか、ポスターのフレームとか、アルミのフレームとかね、ネジ外れていってたんです。周りからばさあっといっぺんに鉄のゴミが一緒に飛んでる状態・・。」
「自分たちが飛ばされている空間がなくなっていくのがわかります」
座席が飛び散り、背広姿の人や女性が折り重なっている絵。
この方は、当時の様子を立体的なオブジェにもしている。忠実な模型ではなく、車体はビールの空き缶であるといった、抽象的な描写になっているようだ。
自分が生き残った場所がこんな場所だったんだよ、というのが、やはり忘れていくんですよね、だんだん・・。すごい変な感じなんですけどね、すごい寂しい感じが、当時はしましてね。自分の記憶と、けがの度合いがリンクしている感じがして・・。(オブジェを指さして)僕はこの、赤い服着ている人の隣のこれですね。」
インタビュアー「(オブジェを)自分のために造ったのですか?」
「そうですね。間にこういう、金属が落ちていたとか、人に突き刺さっていたとかというのを思い出しながら造っていくと、やっぱりこれは見せられないか、という気がしますね。」
インタビュアー「でもこういう風に説明を入れているってことは、どこかの時点で見せようと思われていたのですか?」
「Hmm.すごい悔しかったんです。これがもう全部、人間が運び出されて、がれきもなくなって、すごいきれいな、僕から見ればきれいになっている状態、の写真しか残っていない。」
この事故の衝撃は、第一に通勤電車という、我々がその安全性になんの疑いも持たず日々利用している空間で起きた、あり得ない事故だと言うことだ。
そこは日常生活の延長でありながら、ほとんどすべての人にとって、その空間そのものはこれからやることの目的の場所ではない。
みんな、目的地で仕事をしたり、面接を受けたり、試合をしたり、彼氏と待ち合わせたり、授業に出たりする、その過程で事故に遭遇した。犠牲者の側から見れば、何かが起きないように注意したり、努力して避けたりできる性質のものではない、無差別テロに近い状況といって良いのかもしれない。
第二に、これは運転士個人が起こした事故ではなく、JRという組織が起こした事故にも関わらず、我々はその組織を断罪できないことだ。このことは昨年も書いた。組織が人を殺し、その首謀者、責任者が存在しないというのは、先の大戦であれだけ酷い敗北をしたにもかかわらず、日本人が学習し得ていない悪癖である。
番組でも、遺族が語っておられる。
「私のやるべきことは、なぜこの事故が起きたのかと言うこと。突き詰めればあの運転士があの曲線になぜあの速度で入ったのか、それを解明しない限り、JR西の安全問題は、なかなか見通せない」
「事故を起こした運転士は、僕は、事故当時はこいつ、って思うとったんやけど、よくよく考えると、半分はこいつのせいやけど、半分はこいつも被害者・・。ほんとにこう、先が明るく、これからJRという会社でやっていこうとしていた、青年やと思うんですよね。」
番組ではJRはその後安全対策を見直し、変わった、として、数分をさいている。
柳田邦男氏は「(経済成長やコスト管理に振り回され、人間が見えなくなるという)日本病のツケが、事故という形で戻ってきたんですね。日本の大企業に見られた共通の問題点という意味では、JR西は決して特殊ではなかった。」
「このような日本の体質は、払拭できたかというと決してそうではなく、日本病を克服しなければいけないという意識がまだ、形成されていませんね。」と論評している。
また、被害者の方は「時代が求めていることと、人ができることのバランスがとれていない限り、何を変えてもあまり意味がないのではないか。」と最後に述べている。
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こんにちは。モモパパです。
福知山線脱線事故。
今でもYOU TUBEなんかに当時のニュース映像をみることができますが本当に悲惨な事故でした。
いや、事故というより事件といったほうがいいかもしれませんね。
僕には裁判で無罪になった当時の幹部達への判決が理解しかねます。
投稿: モモのパパ | 2014年4月30日 (水) 09時03分
モモパパさん、こんばんわ。
確かにこれは事件と言うべきかもしれませんね。
昨年書きましたが、日本の現行法では組織に対して刑事罰を科することはできず、個人(代表者など)に罪を負わせるのは組織の複雑さなどからなかなか難しいのが現状なのだそうです。この辺は是非法整備をしてほしいところです。
NHKはたぶん、この番組の再放送をすると思いますので、是非見てみてください。
投稿: うさぎくん | 2014年4月30日 (水) 23時29分
もうすぐ11年目
このドキュメントは捏造
捏造のJR福知山線脱線事故報告書のままドキュメント「Brakeless」を作成してそれが「ピーボディー賞」を受賞しましたが、BBCは取り下げないようです。
http://onaraga2kai.pupu.jp/bbc_e
原発事故と同じ構図、事故調とは、官僚事故調である。
https://www.youtube.com/watch?v=WL_bsoLcIZ8
投稿: sampay | 2016年4月24日 (日) 20時12分
sampayさん、コメントありがとうございます。
お返事するのが遅くなってしまったのですが、このドキュメンタリー映画、関西では先日まで上映されていたようですね。
報告書の件はわからないのですが、番組では事故車に乗り合わせた、デザイナーの方がわかりやすいイラストで、当時の様子を説明されていたのが、とても印象的でした。ふだん同じ列車でよく見かけた人達や、なんとなく印象に残った女の子など、事故がなくても、私達がいつも感じているようなことが、細かく描写されていました。
番組では、そうした丁寧な描写がいちだんと事故の非日常性を際立たせていたように思えます。
投稿: うさぎくん | 2016年4月30日 (土) 20時14分